時計

時計を服に合わせるのか、服を時計に合わせるのか?

HODINKEEでのデビューを果たした元ラルフローレンのデザイナー(現在はアトランタのメンズウェア界の重鎮)であるシド・マッシュバーンが、永遠の難問に取り組む。

私の名前はシド・マッシュバーン。洋服に対するのと同じように時計に凝っているわけではない……が、とても好きだ。私の父はアーリーアメリカン・クロックを集めており、カーポートの向かいに工房をもっていたため、ずっと時計に囲まれて暮らしてきた。

 父と比べると私のコレクションはかなり限られており、ローテーションで使っているのは3本だけ。普段使いの時計(1980年代のロレックス エクスプローラー Ref.1016)、クロスオーバー的な使い方の時計(ハンドメイドのキャメルのスエードストラップをつけた1960年代のチューダー プリンス)、ドレッシーな時計(1970年代初期のゴールドのゼニス、通常はネイビーのNATOストラップを合わせている)。 必要最小限のセレクションといえるが、多くの分野をカバーできる。ブルペンには、古いホイヤーのクロノ、オメガ、そしてゼニスのポケットウォッチがある。しかし最初の3本で、ほとんどの場所に行くことができる。

 特にHODINKEEをご覧になるような諸氏は時計を中心にコーディネートを考えると思うが、私の場合、毎朝玄関を出るときに最後に着けるのが時計だ。しかし、それは間違いなくスタイルの一部なのだ。実際、ボタン付きシャツの袖口をほんの少し後ろにずらして、腕時計がフィットするように調整している。これはほんの些細な、文字どおりわずかなことで、反対側の袖との違和感を感じることもない。しかし、時計が決して後付けの存在ではないことを示すものだ。

水着にも似合う時計があることを著者は証明している。

  究極的には 、私は時計をスタイルの最終的な仕上げだと考えている。着ている服にフォーマル感を与えたり、少しクールな感じにしたり、あるいは色合いを楽しむために使うことができる。例えば、私は次のように実践している。

 まず、私はハイ&ローのミックスが大好きだ。2007年にビジネスを始めたばかりの頃は、かなり幅広い種類のメンズウェアを揃えることが重要だった。イタリア製のハンドメイドスーツやシャツはもちろん、ブルージーンズや水着も近くに置いておきたかった。同じように、ネイビースーツにタイメックスというのもとてもかっこいいし、ビーチにロレックスのエクスプローラーというのも素晴らしい。

 ここで注意したいことがある。極端なコントラストは禁物だ。例えば、私にとって最もフォーマルな時計であるゼニスを、ジーンズとポプリン地のスプレッドカラーのドレスシャツに合わせるのはアリだろう。コーディネート全体を引き立たせることができるかもしれない。しかし、同じ時計をジーンズとポロシャツに合わせると、一線を越えてしまう……つまり、ちょっと違う。このような時計に合わせるには、服装がカジュアルすぎるのだ。というわけで、ルール その1は、「ルールというのは思っているよりも堅苦しくないが、確かに存在する」ということだ。場数を踏めば慣れてくるだろう。

ルール その2:時計でも洋服でも(あるいはロックンロールでも)、「コーディネートにリードシンガーは一人しかいらない」という哲学に私は大賛成だ。例えば、グレンチェックのブレザーや、素材染めのカラフルなジーンズなどは、両方一度に取り入れない。それと同じように、主張のある時計は、他が目立たないときこそ映えるものだ。例えば、ジャガー・ルクルトのポラリス・メモボックスを、地味な格子柄のシャツとブルージーンズに合わせてみるなどである。似合うと思う。しかし、カラフルなストラップと鮮やかなカシミアのセーター、そして大胆なストライプのシャツは避けたほうがいいだろう……デヴィッド・ホックニーでもない限り(その場合、自分の好みを貫けばいい)。しかし、ほとんどの人にとって、「やりすぎ」は「やりすぎ」なのだ。ADVERTISEMENT

ルール その3:時計をすべてにマッチさせる必要はないが、何かと合わせている方がいい。ちょっとした結びつきでいいのだ。今日の私は、タンとブラウンのツイードジャケットにスカイブルーのペンシルストライプのシャツを着て、オレンジとネイビーが少し入ったプリンス・オブ・ウェールズのウールネクタイを締めている。エクスプローラーなら最高だろうが……使わずにおこう。代わりにチューダーのプリンスを手にしたのは、クリーム色のダイヤルとスエードのストラップの組み合わせが、今日のキャラメルや小麦のような色調のコーディネートに合っていたからだ。

 今回も、今朝出かける15秒前にこの決断をした。些細なことで、多分誰も気づかないと思うが、気分が上がるし、ちょっと気が引き締まるような感じもするのだ。

 概して、時計とはそういうものだと思う。誰もが時間を知るために時計を必要としているわけではない。スマホやPC、車のダッシュボードでも時間は分かる。だが、我々は時計が好きだ。私の場合、外見のクールさに引かれて着けるが、それがクールな気分にしてくれる。それはちょうど、服の役割と同じなのだ。少なくとも私にとって。

シド・マッシュバーン氏はデザイナーであり、アトランタ、ワシントンD.C.、ダラス、ヒューストン、ロサンゼルスの5ヵ所に展開するメンズウェアショップの経営者でもある。オンラインはこちら 

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